シドニーに本拠地を置くアジャイルコーチ仲間のAlex Sloleyが作った「綱引き分析 (Tsunahiki Analysis)」をAPACのアジャイルコミュニティに共有してくれたので、本人の許可を得て翻訳し公開します*1。
これはZuzi ŠochováのCAL IIプログラム*2の課題のために、自分なりにフォースフィールド分析をアレンジして作ったとのことです。
綱引き
個人評価
あなたの組織、そしてその組織が面している変化について考えてみよう。
- フォースフィールド分析を変化に適用する
- 変化を評価する
- 変化の成功を増やす方法を示すアクションリストを作成する
変化への追い風と向かい風の評価(OSRC=システムコーチング)
フォースフィールド分析は、決定を推進する力や決定への抵抗となる力に注目するときに便利なテクニックだ。つまり、長所短所を比較検討することに特化したメソッドだ。 フォースフィールド分析を実施することで、決定を後押しする力を強め衝突の影響を減らすことができる。
フォースフィールド分析
- 変化への追い風と向かい風を評価する
- 変化への追い風が向かい風より強いときにしか変化は成功しない
- 意思決定とチェンジマネジメントツール戦略:「追い風」を強化し「向かい風」を軽減する
フォースフィールドとの連携
- 図の中心に計画や提案を記述する
- 変化への追い風になる力を片側に列挙する
- 変化への向かい風になる力を片側に列挙する
- それぞれの力の強さを1〜5で割り当てる(1は弱い、5は強い)
- 数字を合計するとそれぞれの側が及ぼす力の量を測れる
これはプロジェクトが実行可能かどうか、またどうすれば成功率を上げられるかを見極めるのに役立つ。
選択肢は2つある:
- プロジェクトに反対する力を弱める
- プロジェクトに賛成する力を強める
役立つかもしれないヒント
- チームのブレストや見える化で利用しよう
- マネジメントの見える化で利用しよう
- 重要なフォースがあるかもしれないので気をつけて
- この分析は必ずしも変化が実現可能なものであることを意味しないが、1つの指針にもなるし焦点をクリアにできる
- 変化が起きる「損益分岐点」を見つけるのに役立つかもしれない
- 最善の方法は「向かい風」を減らすことだ。単なる「人の抵抗」ではないのか分析してみよう
- 変化を強制しようとするとそれ自体が抵抗になることがあるので気をつけて
- 場合によっては(とくに非アジャイルな環境では)向かい風側にある有形の力をすべて解決できるかもしれない。たとえば「ここに挙げられている問題を全部解決したら、変化をサポートしてくれますか?」というとき
アレックスの回答
レヴィンのフォースフィールド分析が示すものは多く、私はこれをもっと現代的でアジャイルなものに再構成してもよいように思う。フォースフィールド分析を使うときによく使われるのは「駆動する」「抵抗する」「反対する」という言葉だが、いずれも「押す(プッシュ)」印象なのは興味深い。自分なりの解釈を加えて綱引きにしてみる。
綱引きは「引く(プル)」でチームベースだ。より多くの人が引っ張った側が支配力を持つ。そこでこれを日本語の「綱引き分析」と呼ぶことにしよう。
組織の属性は綱引きの両側に並べる。各人の上のスコアが組織の属性を表す。また人を1人描き加えることで新たな属性を追加することもできる。組織構造に影響するチームベースの「プル」ということから、このようなビジュアルのメタファのほうがインパクトがあるように思う。
私が今の組織で評価しようとしている組織的変化は「集中」だ。見てのとおり「低い夢」に大きな「プル」の力がかかっている。「低い夢」「高い夢」にある領域をひとつずつ取り上げ、次々と継続的改善事項を挙げてバックログに入れていきたい。
低い夢
WIP:どうにかして仕事の数を制限したい。実験法:仕事の種類や仕事の状況のWIP制限ではなくシステム上のWIP制限を設定する。
伝統:惰性は強大な力だ。実験法:CFOのケイティにポートフォリオカンバンの前でプレゼンをしてもらって、手本となるべきアジャイルリーダーシップを見せてもらう。
ヒロイズム:人々は献身的で並外れた努力をしている。実験法:カンバンを使って堅苦しくない方法で幸福度やワークライフバランスを計測することを始める。
コマンドアンドコントロール:命令型のリーダーシップがいまだに存在する。実験法:外部からカンバンファシリテーターを招き、手本となるべきサーバントリーダーシップのふるまいを見せてもらう。
不透明:いまだ未確認のものが闇で待ち受けている。実験法:透明性の観点で価値の高い目標を選んで光を当てる。
高い夢
リーダーシップ:権限はどのように委譲されているか? 実験法:カンバンミーティングにブルースを連れてきて鼓舞するようなスピーチをしてもらい、サラとシャロンに明示的に権限委譲をしてもらう。
価値:順位付けには価値が必要だ。実験法:チケットに明示的な価値がなければ捨てる。
コラボレーション:多くの人を巻き込む仕事にも正しく所有者がいる。実験法:カンバンの前でチケットについて一緒に話してくれる人を誘う。
ビジョン:私たちは夜間は舵のない船である。実験法:ビジョンとハッシュタグを作ろう!
戦略:よりよい計画のための戦略、それでも全然ダメだろう。実験法:ロードマップの作業を完了させ、チームに成果をふりかえって次のステップを考えるように言う。
よっしゃ、順序のついたアクションアイテムのリストだ。これを顧客に見せてこよう。
アレックス
2021 CCBY - Alex, Zuzi, miholovesq(日本語版)
原文
*1:3ヶ月近く経ってしまった…
*2:ちょうど現在募集中のコースがここに https://www.scrumalliance.org/courses-events/search/coursedetail/202101955