ナイスビア珍道記

ナイ珍って呼んでね

8回目のRegional Scrum Gathering Tokyo #RSGT2019

adventar.org

Regional Scrum Gathering Tokyo 2019のアドベントカレンダー2018(紛らわしい)第1弾として、運営から見たRegional Scrum Gathering Tokyo(以下RSGT)の話を書きます。
第1回から実行委員を続けているのは、実はわたしただ1人だったりするので、ここで8年分をふりかえってみたいと思います。
とはいえ、ただひたすらに長い思い出語りを読ませるのも悪いので、最後にRSGT2019のDecember Ticket発売と、ボランティア募集についてのお知らせがあります。

TL;DR

色々あってめちゃくちゃ長い。要約はしませんが構造だけ…。

  • はじめに
  • 歴史
    • 第0回:Innovation Sprint
    • 第1回:Scrum Gathering Tokyo 2011
    • 第2回:Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013
    • 第3回:Regional Scrum Gathering® Tokyo 2014
    • 第4回:Regional Scrum Gathering® Tokyo 2015
    • 第5回:Regional SCRUM GATHERING® Tokyo 2016
    • 第6回:Regional SCRUM GATHERING Tokyo 2017
    • 第7回:Regional Scrum Gathering Tokyo 2018
  • 8回目のRegional Scrum Gathering Tokyo
    • RSGT2019 December Ticketの発売のお知らせ
    • RSGT2019 当日ボランティア募集のお知らせ
  • おわりに

カンファレンス運営とかRSGTそのものとかに興味のある人だけ読んでください。大変主観的で限られた見地からなるもので、長い長い実行委員の学びのストーリーです。

はじめに

さておかげさまでここ数年は安定した運営を見せているRSGTですが、第1回から今のかたちで運営できているわけではありませんでした。
スクラムを取り巻く状況も、セッションの様子も、参加者も、実行委員も、今と違うところがたくさんありました。

記憶違いがありましたらご指摘いただけると嬉しいです。

歴史

第0回:Innovation Sprint

いきなり0オリジンで恐縮です。
RSGTが開催される前夜、東京では『すくすくスクラム』や『スクラム道』というコミュニティが活発で、スクラムを始めたばかりのわたしもよくミートアップに顔を出していました。その中の人でもあるkawagutiさんが、Jeff Sutherland博士と野中郁次郎博士を会わせたいというモチベーションで関係各所の協力を得て実現したカンファレンスが2011年のInnovation Sprintでした。
togetter.com

そしてこの頃、すくすくスクラム、スクラム道、XP祭り、オブラブ(オブジェクト倶楽部)などに参加していたメンバーが中心になって、第1回目のScrum Gathering Tokyo開催に繋がっていきます。
ドメインは期限切れですが、RSGTの過去の開催実績リンクとして載せているのは、リスペクトの気持ちだったりします。

このイベントの直前、Jeffの来日に合わせて彼がGabrielle Benefield氏とco-train(研修の共同登壇)をする認定スクラムプロダクトオーナー研修が開催されました。当時一緒に会社を作ることになるとはゆめゆめ思わない、弊社アトラクタの面々も全員参加してたりします。当時の研修記事をわたしが書いているのでリンク。 www.atmarkit.co.jp

ちなみにGabbyはRSGT2019の基調講演で来日し、合わせて認定スクラムマスター研修(こちらは売り切れ)や、Outcome Delivery研修を弊社がホストすることになっています。残席が少しありますのでこの機会にどうぞ。 www.attractor.co.jp

第1回:Scrum Gathering Tokyo 2011

Scrum Gathering Tokyo

この年の特徴

基調講演はHenrik Kniberg氏

今やSpotifyモデルで有名なHenrikの、当時唯一日本語で読める著作は、わたしが大好きな『塹壕より Scrum と XP』でした。参加者には印刷した小冊子を配りました(当然権利者の許可を得ています)。
基調講演じゃないけど『ユーザーストーリーマッピング』のJeff Patton氏も登壇しました。

そもそもスクラムが普及していない

サブタイトルが「Return to the Roots! 〜Scrumで顧客と共に成長し、変化に強い組織を作れ!!〜」、そして採用されなかったサブタイトルが「スクラムを『知っている』から『やっている』へ」でした。なぜ採用されなかったか? 実行委員の話し合いの中で「いや、まだ『やっている』はちょっと早いでしょ」と判断されたのです。実態とかけ離れすぎて煽りすぎと。

飛び石開催で2日のうち1日は参加費無料

2011年10月に、水曜日(Day1)と土曜日(Day2)の2日間、連続しない日程でやるところに当時の事情が伺えます。まず今ほどスクラムはおろかアジャイルに対する理解さえまだまだ少ない当時の状況で、平日開催だとスタッフも休めないし参加者も見込めないかも、ということで日程が弱気です。完全にターゲットを分けて、Day1を有償でビジネス向け、Day2を無償でコミュニティ向けとして開催しました。
会場はDay1が野村コンファレンスプラザ日本橋を借り、Day2は早稲田大学大久保キャンパスを無償でお借りできました。

事例が少ない

「スクラムを『やっている』」と謳うにはまだ早いことがわかるのが、事例発表の少なさです。発表可能で大きな事例はヤフーさんだけでした。ただ、事例がないと普及もしないだろうという実行委員の考えがありました。ショーケース的に見せるのが大事だと考え、Day1ではリレートーク形式で1人15分という事例発表を企画し、小規模でも頑張って結果を出している方々にご登壇いただきました。
Day2は事例ではなく、プラクティスの紹介や提言が多いですね。今とは大違いです。Day2にはコンテンツ委員というボランティアを置き、セッションの企画を自分たちでやっていました。

期待値だけでスポンサーしてくれた企業さんたち(ありがたい)

スポンサーさんも、実行委員が各人のコネを頼ってお願い(通称ドブ板営業)した各社さんです。法人でもなくただのコミュニティメンバーという個人の集まりに対してよく信頼してくれたなぁと思うと、ただただ感謝です。

 チケット販売を翔泳社さんに委託

翔泳社さんにご協力いただき、SEShopでチケットを販売していただきました。

当時の記録

述べ来場者は307人。内訳はDay1が100人ぐらいでDay2が200人ぐらい、て感じでしょうか。 ブログ職人の記事を見つけましたので貼っておきます。今見てもすごいなw

d.hatena.ne.jp

d.hatena.ne.jp

運営の思い出

さて、このSGT2011ですが、今はアメリカに帰っちゃいましたが日本の初期のCSM研修受講者なら全員知っているEmmerson Millsさん。彼が「Scrum Allianceから100万もらえたからScrum Gatheringやろうよ」と何人かに声をかけて集まったのが5〜6人。これが初期の実行委員でした。
イベント名もScrum Gathering Tokyoだし当時はSGTと略されていました。今でもRSGTではなくSGTって呼んでしまったりします。

お金ももらえて今が機運だ、法人も口座もないけど、その辺は借り物競走でいいから走っちゃおうぜ、っていう感じで強引にアマチュア開催したのがこの年でした。とにかくその辺の不整合というか不透明さが、このあとわたしの心に数年薄っすら影を落とすことになります。
ちょうどMillsさんたちがYAPC::Asia Tokyoを法人化したのが2008年? RubyKaigiも法人化しました。詳しいことはわかりません。各種コミュニティの中の人たちを中心に、お金を扱う規模の大きいコミュニティの健全性をみんなが気にしだした頃でした。この点、同じRegional Gatheringでも上海の運営はずっと練度が高くて、わたしが海外のコミュニティにコミュニティ運営を学ぼうと思ったのもこれがきっかけだったりします。

当時のわたしのつぶやき。当時は、赤字が発生したら金銭負担をするというのが実行委員の要件でした。実行委員会は「100万までなら出せる」「家庭の事情が…」みたいな生々しい話もありました。実行委員長kappa4は心労で痩せたらしく実行委員長ダイエットとか言ってたなぁ。
コミュニケーションにメーリングリストを使っていたのですが、実行委員のML総数が3,000通、コンテンツ委員が1,300通でした。

地獄とか言ってますが、未熟なりに楽しんでいます。実行委員がスタッフとして経験していたイベントがXP祭りやオブラブだったため、今とはまた違ったお祭り感がありました。学祭のような感じ。

第2回:Scrum Alliance Regional Gathering Tokyo 2013

www.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

基調講演は野中郁次郎博士、Jurgen Appelo氏、Jim Coplien氏

「スクラム」の言葉の由来にもなった論文の共著者である野中先生、Management 3.0のAppelo氏、組織パターンのCoplien氏による基調講演3連発でした。

開催時期が年明けに

第1回が2011で、第2回が2013なのは、10月開催を1月開催に移したからです。理由はよく覚えていませんが、2月はデブサミ、5月はアジャイルジャパン、7月はアジャイルカンファレンス東京、9月はXP祭り、年末は忙しい、とかで、イベントのない時期にやろうとしたのが動機だった気がします。まだまだ狭いコミュニティなので、実行委員やボランティア、参加者の食い合いをしないようにという配慮だったと思います。

会場が秋葉原へ

カンファレンス然としたカンファレンスにするべく、身の丈に合ってないことにも気付かず秋葉原UDXを利用しました。

大雪

もし開催中止になった場合、大きな損害が発生します。この日も大雪の予報で気が気ではありませんでした。実際交通機関に影響が出ましたが、開場時間を30分遅らせることで無事に開催できました。いまだに「RSGTといえば雪」「今年は晴れてるね」とか言われます。

Scrum Allianceとの関わり

イベント名に"Scrum Alliance Regional"がつきました。これはScrum Allianceが直接運営するGlobal Gatheringに対して、世界各地のローカルオーガナイザーが運営するRegional Gatheringという意味です。Scrum Allianceから「スポンサーはするけど、Regionalにしてね」って言われたのがこの年でした。
そして、(声をかけられた側からすれば)棚ぼた的な前年のスポンサーシップと異なり、Scrum Allianceのフォームから申請してスポンサーシップを獲得し、実行委員が直接先方とやりとりするようになったのもこの年からでした。

翔泳社さんのサポート

決済代行のみならず大きなイベント運営のノウハウの伝授という面でも、翔泳社さんに協力を仰ぐことにしました。数千人が来場するデブサミを運営している翔泳社さんからはスポンサー集めや決済、当日のスタッフ配置やシーバーの使い方、受付に到るまでプロの仕事を盗ませてもらいました。
ただ運営スタッフさんがスーツ姿だったり、受付などもフォーマルで、コミュニティのイベントという雰囲気から遠のいていました。RSGTとしては少し無理して背伸びしていた時期な気がします。

スポンサーセッションがある

当時なりにスポンサーメリットを考え、セッション枠をいくつか設けていました。とはいえ、今タイムテーブルを見てもそれほど違和感はありません。イベント趣旨をご理解いただき、完全なる宣伝というセッションはお控えいただくようお願いをしていました。よくご理解いただけたなぁ。ありがとうございます。

平日開催

この年から平日開催にこだわります。
会社が社員のカンファレンス参加にお金を払うという、今では当たり前になりつつある世界を作りたくて、参加費無料の日を廃止しました。スクラムの導入に対する高い壁と比べたら、会社に説明して数万円の参加費用を獲得するぐらい朝飯前だろう(という世界であって欲しい)、という期待がありました。水とコミュニティはタダだと思っている人が多い時代です。でも、念のために1日券と2日通し券という券種を用意したところが、まだ弱気です。実際は受付やチケット確認作業が煩雑になるだけなのに…。

当時の記録

述べ246人。ただ、2日通し券をカウントしているので、実質は150人ぐらいかなぁ。

運営の思い出

スクラムの普及促進を目標に、前年の実行委員を半分残すという方法で実行委員の募集がありました。
そして、実行委員長制度をやめ、スクラムチームの体制にしました。
そういえばわたしがPOをやったんでした。POのわがままとして、Day2午前中の特別講演に野中先生をお呼びしておきながら裏番組をセットし、"Scrum the next generation"というタイトルで「先人に学ぶのもいいけど俺たちの話しようぜ」というパンクな気持ちでエモいオムニバスセッションを企画させてもらいました。
第1回の発起人になったMillsさんをはじめ、自分たち世代のすごい人を集めてアジャイルについての熱い想いを語ってもらったセッションで、当然参加者数は少ないのだけれど、RSGT史上屈指の最高なセッションだったと今でも思っています。

RSGTのお金周りの透明性については社会的信用のある法人と組むことによってある程度担保されるのではと考えていたのですが、今考えると独立採算じゃない限り解決していないですね。

第3回:Regional Scrum Gathering® Tokyo 2014

www.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

基調講演はMike Beedle氏とJutta Eckstein氏

不幸なことに今年凶刃に倒れ亡くなったMike Beedleさんがキーノート。来ていただいていて、本当によかったです。それまで日本語訳されたスクラムの本といえばKen Schwaberと彼が書いた『アジャイルソフトウェア開発スクラム』しかなかったのですが、ほぼ在庫がない状態で増刷も見込めず、即売会ができませんでした。版元が技術書籍出版事業から撤退するというタイミングだったのです。

やっと名前が固定する

実行委員だけでなく皆さんにも、略称のSGTで呼んでいただけるようになっていました。しかし頭にRegionalがついたことで、ハッシュタグはRSGTとSGTどっちだ、みたいな話がではじめていました。

セッション公募

現在のようなオープンプロポーザルではありませんが、フォーム申請方式のセッション公募を始めました。応募は11件。皆採用されました。

スポンサー公募

翔泳社さんの協力によって獲得したスポンサーの他に、フォームによるスポンサー募集もしてみました。応募は2件。ありがたかったです。それ以外のスポンサーは営業活動によって獲得したものです。

アジャイルゲーム

ワークショップやエクササイズ、ゲームのようなものを集めたセッションを企画しました。
有償で平日開催だったからか、それまでのいわゆる"ご近所さん"、つまり無料のミートアップやコミュニティイベントに足を運ぶ人、ではない参加者層が増えてきていました。
そういった人たちに向けて、当時活発だったいくつものアジャイルコミュニティの紹介をする目的で企画したセッションです。コミュニティごとにワークショップやゲームを持ち寄っていただき、広い部屋で何ヶ所かに分かれて同時進行するものでした。
いわゆる勉強会慣れしている人も、そうでない人も楽しんでくださっていたのが印象的でした。

当時の記録

2日間を通した参加者数は述べ161人。
後述しますが、実行委員の数が減ったことで、ドブ板営業(実行委員が各方面に宣伝してチケットを売る)ができなかったのが響いたのかもしれません。

運営の思い出

一言で言うと、しんどかった記憶しかないです。
自分自身も独立してフリーランスになったし、転職した人も多く、今まで通りコミットできないということで、第1回、第2回と続けてきた実行委員のコアメンバーがいったん抜けて、実行委員が3人体制になった年でした。前述した錘が頭の中に霧のように立ち込め…。
こりゃー来年は続かないな、と思っていたし、実際イベント終了後に実行委員の中で「来年もやろう」という話が出なかった記憶があります。
翔泳社さんにも、この形で来年も続けることは考えない、とお伝えしました。同時に、ここまでの3年間で、良くも悪くもイベント運営に関するプロの仕事というのを間近で見れたことが、今に繋がっているのだなぁとも思います。

怒ったり泣いたりしてたらしいw 疲れてます。

第4回:Regional Scrum Gathering® Tokyo 2015

https://2015.scrumgatheringtokyo.org/2015.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

基調講演は江端さん

それまでいわゆる"外タレ"頼みだった基調講演を、国内の第一人者であるebackyさんにお願いしました。日本人唯一の認定スクラムトレーナー、かつSGT2011では実行委員でもあった彼に、これまでの日本のスクラムコミュニティへの貢献に対する敬意として依頼したものです。

省エネで再起動

前年までのように、カンファレンス然としようと背伸びしていたところを改め、省力化して身の丈にあったイベントに戻しました。もっともリスクとなるのが会場費用です。これはミッドタウン時代のヤフーさんに会場をご提供いただくことで、カットすることができました。実行委員のteyamaguさんはじめ中の人にはだいぶご迷惑をおかけしましたが、ほんと感謝しかないです。

週末+平日の3日間開催

Day1とDay2(土日)が参加費無料のコミュニティイベント、Day3の月曜は有償で1トラックのみのカンファレンス、という立て付けにしました。参加者層が異なるだろうという予想の通り、Day1、Day2は活気があり、Day3は聴講主体で大人しい感じでした。

セッション公募

スポンサーセッションもやめようということで、Day1は『スクラム祭り』のサブタイトルを付けIdeascaleでセッションを公募しました。23件の応募があり、3トラック作ることですべての公募セッションを採択することができました。
スポンサーセッション自体の是非というより、「セッション枠があるのでスポンサーしてもらえませんか」みたいなやりとりが誰の価値にもつながらないなと思ったからです。
以後、RSGTはスポンサーセッション枠を復活させていません。

Open Space Technology(OST)

Day2は初の試みとして、OSTを実施しました。RSGT2018では大変好評だったOSTですが、この年はアジェンダのないイベントに来る人は少なく、日曜日ということもあったのかもしれませんが参加者は30人ぐらいでした。そんな中参加する人はやはり練度が高く、常に濃い議論が沸き起こり、来ないともったいないぐらいの有意義な時間でした。

当時の記録

述べ来場者数は207人でした。ほとんどがDay1参加者で、Day3は60名ぐらいだったと記憶しています。

運営の思い出

第3回で心底疲れていたわたしは、RSGTの活動のない生活に若干違和感を覚えながらも勤務先に通っていました。場所は当時の楽天本社の近くで、kawagutiさん家の近所。ふと道端でkawagutiさんとすれ違った時に「そういえばSGTどう?」「やる?」「やるか」みたいな感じで、リブートが決まりました。
翔泳社さんの協賛はいただかず、自分たちの手の届く範囲でやろうとリセットしたのが、初期のRSGTの最後であり、今のRSGTの始まりでもあるように思います。スポンサーは無理して営業しない、セッションを企画するのではなく公募する、場を仕切るのではなく勝手に話してもらう(OST)、タイムテーブルは自前のサイトを構築するのではなくSaaSを利用して公開する、ランチは下のコンビニ弁当、などです。

運営がアジャイルに

この年、その後のカンファレンス運営をガラッと変える予算方式が導入されました。スポンサーやチケットの売り上げを読み、確保できた予算に対してキャッシュフローを計画する方法です。Beyond Budgeting的な考え方で、わたしたちは票読みと呼んでいます。提供したい価値に順序をつけて確実にデリバー可能なものをデリバーしていくやり方です。これによって、どこまで広げて大丈夫か、どこまで省力化すべきかを落ち着いてジャッジできるようになったのが大きいです。

それまでは、まず会場費用の上にやりたいことを積み上げてまとめて見積もり、予算を達成するにはスポンサーがどれだけ必要かとかチケット何枚売らなきゃ、みたいな考え方をしていたのですよね。スクラムのカンファレンスの運営がウォーターフォールでどうする!! 今となれば当たり前となったやり方も、大きな学びのキッカケがありました。

また現在の一般社団法人のコアメンバーとなる実行委員が腹をくくったのも大きな出来事でした。前年まで錘となっていた、会計周りが特定の企業に依存し透明性を欠いている状態を解消すべく、この年の1月、任意団体を設立したのです。任意団体として銀行口座を設立し、会計も含め独立性を持つことになりました。それでも相変わらず法人格がないため、剰余金を出さないように調整に苦心していました。

ebackyさんと知り合った2009年ぐらいからの色々を思い出し、個人的に大きなカタルシスを迎えたのがこの年でした。

第5回:Regional SCRUM GATHERING® Tokyo 2016

2016.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

基調講演はBas Vodde氏とKen Rubin氏

スクラムのスケーリングのためのフレームワーク、LeSSの提唱者であるBas Vodde氏と、『エッセンシャルスクラム』の著者Ken Rubin氏が基調講演でした。BasさんはどちらかというとTech寄り、Kenさんはどちらかというとマネジメント寄り、という人選です。

平日2日間開催の有償化

運営のノウハウもたまってきたので新しいことにチャレンジすべく、前年までは省エネとか言ってたくせに、大きな会場を借り完全有償化する方向に転換しました。
キャッシュフローを計画しながら、ここまで達成したら何ができる、というのを明確に線引きできているからです。

Confengineでのオープンプロポーザル

全セッションを公募セッションにするにあたり、Confengineを使ったオープンプロポーザルを始めました。Confengineを使うことで、プロポーザルだけでなく、投票やコメントができるようになりました。これはつまり、プロポーザルの時点で既にRSGTへの参加が始まっているのです。
応募は85件、5ヶ国から集まり、のべ1223票もの投票ののち、23セッションが採択されました。

英語セッション

国外からの参加や、国内にいる非日本語話者のために、参加者のダイバーシティを上げるための施策として英語セッションを採択しました。

スポンサー公募

初めてスポンサー枠(セッション枠ではなくブースの数)が完売しました。
RSGTではスポンサーブースに立っていただく人も含め、すべての人を参加者と捉えています。ご参加された方はわかると思いますが、セッション聴講だけでなく、OpenJam、コーヒーの待ち時間、高いテーブルの周り、廊下、スポンサーブース、あらゆるところで起こる会話すべてがコンテンツです。本家Global Gatheringもこれらをコリドートークと呼び奨励しています。RSGTのスポンサーは、この点にご理解とご協力をしてくださっている、とても理解のある積極的な企業さんなのですよね。セッション枠もない、ブーススタッフ専用のパスもない、それでも参加してくださることに大変感謝しています。

会場や構成が現在の形に

会場(大崎ブライトコアホール)、公募、セッション構成、コーヒーブレイク、Open Jam、パーティー、通訳、ボランティア募集、すべてがだいたいパターン化されました。現在のRSGTの雰囲気があるとすればこの年からのものだと思います。パターン化することでスタッフも動きやすく、リピーターは新規参加者を迎えやすくなりました。

チケットが完売

おかげさまで、チケットが完売するようになりました。
スポンサー枠でも触れましたが、どんな有名人だろうが、どんな知り合いだろうが、チケットを持たずに受付を突破させません。ふっと遊びに来ていただけるのは嬉しいのですが、苦労してチケットを買ってくださっている参加者の方に説明できるような公平性を保つのが健全だと考えているからです。

Scrum AllianceからCEOが来訪

きっかけは忘れましたが、当時のScrum AllianceのCEOとBoard Memberが会場を訪れました。日本語なので内容はわからないけど、こんなに熱心な人たちが集まっているなんて!と驚かれました。

CSP+ Retreatを併設

国内でも数が増えつつあった認定スクラムプロフェッショナル(と、その志望者)のためのクローズドな会が行われました。そういえばその後やってないなぁ…。運営が大変な割にバリューがただ飯ぐらいしかないのでやめたんですかね。

当時の記録

参加者数は261人でした。前年までのような延べ人数でなく、2日間を通して参加した実質の人数です。チケットは完売しました。昨年までが嘘のようです。

運営の思い出

第1回が信じられないようですが、スクラムが普及したのを実感しました。それまで、何かあったら自腹で補填だと覚悟していたのですが、参加費用やスポンサー費用など、金策(主に収入)についてはほとんど心配が要らなくなりました。以前のようなドブ板営業をやらなくても、人もお金も集まるようになったのです。票読み方式も安定してきました。赤字補填に胃を痛めなくて済むなら続けられるな、とやっと思えたのがこの年でした。

SGT2011のスローガン「『知っている』から『やっている』へ」になるまで実に6年。RSGTも小学校を卒業するのだと思えば、6年て意味のある数字に思えてきました。次の3年は中学生です。

第6回:Regional SCRUM GATHERING Tokyo 2017

2017.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

基調講演はRachel Davies氏、長沢智治氏、武市大志氏

RachelはXPの人、長沢さんは日本のアジャイルコミュニティを支援し続けてきてくれた人、武市さんは新聞社という非IT分野でプロダクト開発に関わった人、というバラエティでした。

パターン通り

前年うまくはまったパターンを再度はめるだけなので、運営が楽になりました。ボランティアの方も、リピーターの方が新しい人をフォローしたり、自律的に動いてくれていてすごいです。感謝しかない。

Coaches' Clinic

本来は品質保証という意味で認定スクラムコーチ、認定スクラムトレーナーが対応するものですが、日本にはほとんどいないため、認定は持っていないものの経験豊富なアジャイルコーチやスクラムマスターに相談できるコーナーを作りました。

公募が定着

この年の応募は88件、5ヶ国から集まり、23セッションが採択されました。

チケットが発売期間満了前に完売

前年に続き、おかげさまでチケットが完売するのですが、それが早くなってしまいました。あとで買おうと思ったのに、とか、気づいたら売り切れてた、というクレーム(?)が発生し始めました。申し訳ありません…><

主催の実行委員会が法人化

これまで利益の繰越が出ないように使い切りの調整をしていたのですが、納税の義務を果たし剰余金は翌年に回せるよう、第5回開催後の2016年6月に任意団体を一般社団法人化していました。
これによってより経済的な不安はより解消されたし、社会的な信用が高まったのではないかと思います。
Wikipedia情報によるとJeffの誕生日は6月20日とのことなので、設立日を6月20日にしました。が、違う日だという説も聞きました。教えてえらい人。
また某社の法務の方の指摘によってSCRUM GATHERINGというイベント名は日本では商標登録がないのに®️表記をしているとよろしくない、という指摘を受け、Scrum Allianceに代わり商標登録も出願しておきました。

当時の記録

来場者数は実質284人でした。

運営の思い出

法人化のくだりで書いた通りです。とても楽。

第7回:Regional Scrum Gathering Tokyo 2018

2018.scrumgatheringtokyo.org

この年の特徴

2.5日間開催に拡張してOSTが復活

2日間開催だと物足りないという声を受けて、土曜日に半日だけ延長してみました。土曜日ということもあり、積極的な参加を期待してOSTを実施しました。
土曜日にも関わらず100名程度の参加者がいて、さらに自分からトピックを提案する人も多い。みんな喋れる。多くの人がスクラムを実践していて、それぞれに悩みを持っていてそれを語り合いたがっている。RSGT2015で30人でやった時とは規模が全く違います。

公募

応募数は85件で、採択されたのは25セッションでした。

当時の記録

来場者数は実質292人でした。うう、キャパがギリギリ…。

運営の思い出

前年同様とても楽でした。 ただ、流石にチケット争奪戦を起こしたいわけではないので、もっと広い会場に変更しようかという検討を始めていました。しかし安くて綺麗で大きい会場は埋まっていて空きがない、という学びを得るはめに。
したがってRSGT2019は同じ場所で開催、よってチケットが30分も経たず売り切れるという悲しい事態が起きてしまいました…。ご不便をおかけしますが、ご容赦ください。

8回目のRegional Scrum Gathering Tokyo

2019.scrumgatheringtokyo.org

さて、11月発売分のチケットが即日完売という状況で大変皆様をヤキモキさせているRSGT2019ですが、このたび、かき集めた数十枚のチケットを販売に回せることになりました!

※ かき集めるとは、すでにチケットを持っているのに応募したセッションが採択されてチケットが余った人から返却してもらう、とか、セッションが不採択になった人のために予備で空けておいた空席を解放する、とかです。この空席確保のタイミングが11月末となっていたため、December Ticketの販売について未定とさせていただいていました。

発売開始日時は、2018年12月11日(火) 12:00 pm(日本時間正午)です。
以下のURLからお申し込みください。
なるべく多くの方に行き渡るようにしたいため、複数枚購入はできません。
1回あたり1名のお申込みになりますのでご了承ください。

www.eventbrite.com

また、当日ボランティアも募集を開始します。
募集要項および応募はこちらから。
ご応募お待ちしています。
RSGT2019 ボランティア登録フォーム

初期の頃とか、本当に知恵がなかったんだなぁと思うし、ノウハウもないのによくやったなぁと呆れるような感服するような複雑な気持ちです。お金のことばかり書いてしまった気がしますが、パッション以上にお金は重要。
こういった紆余曲折を経て、やっと自信が持てる、毎年人気のイベントになってきたわけです。
過去からこれまでに関わってくださったスポンサーさん、参加者の皆さん、実行委員、スタッフ、アドバイスをくれた鶏さんたちw、みなさんありがとうございます。
これからもみんなに愛されるコミュニティイベントにするべく頑張らないで頑張ります!

明日はサイボウズの天野さんです。